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京町家の秀作、藤野家住宅
- 「藤野家住宅」は、1926(大正15)年、京都御所南側の閑静な住宅地に室町筋の白生地問屋の番頭の住まいとして建てられました。
通りに面して高い塀を構える典型的な「大塀造(だいべいづくり)」の京町家の秀作として、2016(平成28)年に国登録有形文化財に指定されております。
塀の内側に、平屋建の「表側棟」と二階建「居住棟」を「玄関棟」でつないだ造りで、玄関を兼ねた四畳半の茶室や、数寄屋風意匠が取り入れられた瀟洒な佇まい、門の脇に雪隠や供待(待合)を備えた前庭を茶室の露地として使えるように演出しているのもみどころとなっています。 -
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保存に向けて 今できること
- 年間700軒以上の京町家が減失している現状を憂い、京町家を「点」ではなく「面」として保存しようと、2019年に一般財団法人藤野家住宅保存会を設立。研究者に積極的に場所や資料を提供してきました。
年に2回行う「しつらえ替え」では、2023年より京都美術工芸大学の学生さんにもお手伝いいただくなど、若い世代の方々にも昔の生活を感じていただいております。 -
- 2019年には「京の夏の旅」で初めて一般公開し、多くの皆さんに藤野家住宅の存在と保存継承する大切さを認識していただきました。
その後も、お茶会や写真撮影会などの文化的事業に場所を提供してまいりました。
2024年からは「オープンデイ」と題する一般公開を行うなど、生活の場である藤野家住宅に触れていただく機会を増やしております。 -
- 台風で甚大な被害に遭った時も従来の工法にこだわって修繕し、できるだけ建築時の姿を残すように努めています。
今回の五右衛門風呂再建もその一環です。 -
懐かしい昭和の風呂文化「五右衛門風呂」
- 「五右衛門風呂」とは鉄製釜に直火でお湯を沸かす風呂の総称で、安土桃山時代の大盗賊石川五右衛門が三条河原で釜茹での刑に処せられたという伝説に由来するともいわれます。昭和30年代頃までは一般的に使われており、底からお湯が沸いてくることによる何とも言えない温もりが特徴です。
釜底に直接足を着ければ、火傷をしかねないので入り方にもコツがあります。木製の浮き蓋に体重をかけ、バランスを保ちながら浸かると、じわーっと体が温まります。 -
- 60代以上は五右衛門風呂の記憶がある方もいらっしゃるようで、見学に来られた際に使われなくなった五右衛門風呂を見て、「懐かしい」「おじいちゃんの田舎で入ったことがある」「釜に触れると熱々だった」などといったお言葉をいただいております。
藤野家住宅の五右衛門風呂も15年前まで現役で活躍していましたが、時の流れとともにだんだんと釜が錆びつき、排水口も壊れ、使うことができなくなってしまいました。 -
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諦めかけたものの…再建にチャレンジ
- そのため、数年前から五右衛門風呂を再建しようと計画をしていましたが、修理を相談した左官屋さん誰もが「五右衛門風呂を手掛けたことがない」との答えばかりでした。
いったんは諦めかけたのですがようやく昨年、京町家に詳しい建築設計士さんの紹介で、左官屋さんと大工さんを探し当てることができました。彼らもこの計画にチャレンジすることに同じように意欲を燃やしてくれ、いよいよこの秋、工事を始めることになりました。 -
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のしかかる、厳しい費用負担
- 再建工事は、錆びて使えなくなった風呂釜や煙突の解体・撤去、耐火レンガ積みや新たな風呂釜設置などの左官仕事、煙突や軒裏補修などの大工仕事が必要で、総額約250万円の費用がかかります。国の登録有形文化財ではありますが、五右衛門風呂再建工事は国や京都市の補助金の対象事業には該当しません。自己資金で賄うには厳しく、クラウドファンディングでご支援をお願いしたいと思っています。
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リターンについて
- ご支援いただいた金額に応じて、藤野家ならではの返礼品をご用意しています。
完成後の五右門風呂に入浴していただくことはもとより、藤野家伝来のお正月料理や夏のしつらえ替えなど、京町家の暮らしぶりを体験していただく機会を設けています。
また、家紋入りの和菓子やオリジナルの日本酒などを、お礼の気持ちを込めてお送りさせていただきます。 -
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リスクとチャレンジ
- 万が一、目標金額に届かない場合、何としてでも五右衛門風呂は完成させます。ようやく探しあてた左官屋さんや大工さんとの信頼関係もあり、技術を次世代に継承したいという彼らの熱意に応える責務があると感じています。
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さいごに…
- 五右衛門風呂を沸かし入浴することは、私にとって小さい頃から慣れ親しんだ日常でした。ところが五右衛門風呂が壊れ、いざ再建しようとした時、それはとても特別なことだったということに気が付きました。
近代的な風呂にすればこれほど苦労することもなく、費用の面でもうんと安くできたはずです。しかし、築100年の京町家です。できるだけ、本来の形で次代につないでいくことが受け継いだ私たちの使命であると思っています。
伝統的な職人技、京町家での暮らしぶりなども含め、より多くの皆さまにご理解いただく機会にもしたいと願っています。
ご支援のほど、よろしくお願いいたします。 -
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賛同者メッセージ
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株式会社ゆとなみ社 代表 湊三次郎さん
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浅井食堂オーナーシェフ 浅井幸雄さん
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下前理容店店主 下前國弘さん
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WIN1級建築設計事務所 主宰・認定特定非営利活動法人古材文化の会 顧問 栗山裕子さん
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京都産業大学現代社会学部教授 鈴木康久さん
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公益財団法人京都市景観・まちづくりセンター 専務理事 北川洋一さん
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藤野家住宅保存会評議員 永島宣彦さん
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