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ご挨拶
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- 公益財団法人櫻谷文庫の門田理と申します。8年前から代表理事をやっていて、櫻谷のひ孫になります。昭和15(1940)年設立の櫻谷文庫は櫻谷作品、膨大な写生習作や収集した書画類、櫻谷の画材、遺愛品の保存調査、管理公開する事を目的としています。
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- (洋館天井のひび割れ)
- 近年、素晴らしいモダン建築である櫻谷文庫の洋館の天井が写真のようにひび割れが入ってきてしまいました。そこで、来年2022年3月から5カ月かけて洋館2階の天井と壁の39.8平方メートルのしっくいの亀裂(ひび割れ)の修復補修工事を行います。しっくいは乾燥時間をとる必要があるため夏季に限定され、工期も長くなります。この補修工事で屋根の脱落を防ぎ、この建物を次世代に受け渡すことができます。
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京都市指定文化財指定の経緯について(京都市文化財保護課から)
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- (櫻谷の肖像)
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- (大正2年新築時本館前写真)
- 櫻谷文庫は、日本画家木島櫻谷(1877~1938年)が、大正2(1913)年に建てた住宅です。櫻谷が居を構えた衣笠には、菊池芳文、菊池契月、福田平八郎、徳岡神泉、村上華岳、土田麦僊、小野竹喬、黒田重太郎、山口華楊、宇陀荻邨、金島桂華、西村卓三、堂本印象、三輪晁勢、石本正をはじめとする多くの画家が移り住み、「絵描き村」とも称されました。いまも三輪晃久さんら画家がお住まいになっています。
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- (洋館の廻り階段)
- 建物は、門を入って正面に和館、西に洋館、北西に画室が建ちます。このうち、洋館は応接室へ上がる廻り階段にアールヌーヴォーを思わせる造作を施しています。
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- (洋館の西洋インテリア)
- 応接室は通常より高い位置に床構えが設えられ、和洋が混在した文人趣味の空間となっています。
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- (和館)
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- (画室外観)
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- (画室の前にある櫻谷の父、周吉が櫻谷に送った歌碑)
- 住居である和館、応接や寝室の機能をもつ洋館、制作の場である画室が同敷地内に建ち、櫻谷が居住した頃の状態をよく残しています。衣笠に残る近代日本画家の美意識を示す建物として価値が高く、大正期の大規模住宅として意匠的にも優れた重要な遺構として、平成29(2017)年3月31日に京都市有形文化財として指定されました。(京都市文化財保護課)
特に画室は第2次世界大戦のあとには、今は衣笠山の麓にある衣笠幼稚園に、その後昭和26(1951)年から昭和51(1976)年まで京都府立図書館上京分館などに利用頂いておりました。いまでも当時の衣笠幼稚園を卒園された方や、図書館で勉強をしていたことのある方々が公開時にお越しになることがあります。衣笠幼稚園ができた時にはまだ池があり、その池は安全のために埋められましたが、その頃のことを覚えている方もおられました。昭和30(1965)年頃の櫻谷文庫の様子は、櫻谷が作品制作をしていた40年以上前とかわらないタイムマシンのような場所です。 -
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いままでの活動
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- (昭和15年財団法人櫻谷文庫設立時)
- 昭和15(1940)年の財団法人櫻谷文庫の設立には、高島屋4代当主の飯田新七様はじめ初期の光悦会の役員や田中昌太郎立命館大学学長など多くの方々のお世話になりました。設立の目的は、櫻谷の遺蹟、遺作品、櫻谷の蒐集した法帖、詩文集、書画、書籍、典籍や遺愛品を保存管理して、美術研究者や芸術家に役に立てるようその役割を果たすこととしておりました。現在もその趣旨にそって運営をしております。
櫻谷文庫(木島櫻谷旧邸)の現存する3棟の和館、画室、洋館は2007年に国登録有形文化財となり、2012年から毎年公開してきました。さらに、2014年には京都市指定景観重要建造物、2017年には京都市指定有形文化財にもなっています。
櫻谷文庫木島櫻谷旧邸にお越しになられた皆さまから寄せられたコメントをご紹介します。
「多くの画家が創作に勤しんだ地『衣笠』、絵描き村と呼ばれたその地に立地する櫻谷文庫には、近世を代表する日本画家・木島櫻谷の日々の営みが残っています」(若手の京都市職員さま、京都市発行「裏を往く~あなたの知らない北区」より)
「(木島櫻谷)旧邸は、母屋だった和館、応接室や和室(今は収蔵庫になっており公開していません)のある洋館、緑の樹々に囲まれたアトリエ兼画塾の画室と、3棟が現存、そのデザインやしつらえに、近代日本画家の美意識と個性が宿る」(日本版画協会準会員、映画監督・片岡れいこ、『京都 レトロモダン建物めぐり(メイツ出版刊)』より)
収蔵物調査や公開に併せ、築100年を経過し経年劣化が進むこれらの建物を京都市の補助もいただき、和館、画室の屋根の軽量化修復、洋館の破損調査、屋根、外構の補修を実施してきました。 -
集まった資金の使い道
- 洋館2階展示室天井16.8平方メートル、壁面23平方メートルの左官工事を行います。
1913年の左官上林豊次郎による施工からの初の工事。工事費は総額2,750,660円必要です。今回のクラウドファンディングのご支援で足りない費用は持ち出しで埋める覚悟で次の世代に文化財を引き継ぐことができるよう取り組んでおります。もし目標金額を超えた場合は超えた分も維持管理のために大切に使わせていただきます。何卒、ご支援をお願いいたします。 -
御礼の品について
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- (宮脇賣扇庵の扇子<2階の格天井にある明治35年に宮脇賣扇庵が京都画壇48人の絵描きに発注した扇の絵柄。梶の葉、朱軸の筆をあしらった櫻谷筆の図案より>)
- それぞれのリターンについては、寄附型クラウドファンディングとして寄附控除証明書を全てのご支援につけさせていただきます。今回限定となるオリジナルグッズや櫻谷作品をモチーフとした宮脇賣扇庵の扇子など、親しく櫻谷の美意識を感じていただけることと思います。また、櫻谷文庫入館ペアチケット、2017年に京都の泉屋博古館、2018年に泉屋博古館東京で開催された「木島櫻谷-近代動物画の冒険」特別展図録、特別シンポジウムなども予定しております。特別展図録は増刷の予定はありませんので貴重な図録です。さらに、櫻谷の写生帖をガラス越しではなく直接手に取ってご鑑賞いただける特別な体験、また櫻谷文庫公開ご招待に加え、近くの水琴亭さもんのテラス席でお食事する権利(幕府や皇室の御殿医を務めていた福井家の庭のテラス席)などをご用意しています。全てのご協力ご支援いただいた皆さまのお名前を、芳名録に記載し櫻谷文庫に収蔵させていただきます。
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リスクとチャレンジ
- 新型コロナウイルス感染症をはじめ、社会状況によっては、やむを得ず工事が延期されたり、リターンの発送が遅くなる可能性がございます。その場合も、なるべくみなさまにご納得いただけるよう誠意を持って対応させていただきます。
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さいごにメッセージ
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- 京都の市街地、室町三条の商家で生まれた櫻谷は、36歳の時に衣笠の地に居を構えました。絵描きのこだわりの詰まった「衣笠絵描き村」最初の家です。往時の京都画壇の息吹を今に伝える木島櫻谷旧邸を次の世代に伝え、明治・大正の京都のダイナミズムを感じていただければと思っています。修復を進める中で櫻谷の芸術、世界観を身近に体感、京都の新しい一面を感じていただけるよう公開展示を進めていきます。
コロナ禍で公開収入が95%以上減少し修復資金が逼迫しています。なにとぞご支援いただきますよう、よろしくお願い申し上げます。 -
賛同者のみなさま
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・京都工芸繊維大学名誉教授・武庫川女子大学教授 石田潤一郎氏(日本近代建築史・都市史、京都市美術館開催「モダン建築の京都」展監修)
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・京都工芸繊維大学教授 清水重敦氏(デザイン・建築学系)
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・片岡れいこさん(「京都レトロモダン建物めぐり」著者、メイツ出版刊)
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・冨士本学さん(東京大学大学院工学系研究科 建築学専攻腰原研究室 博士後期課程在学中)
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・矢野桂司先生(立命館大学文学部教授(地理学))
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・実方葉子さん(泉屋博古館 学芸部長)
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